たんぽぽだより
2020.05.04
2020.05月号より
旅に出ると、道に迷っている高齢者から行き先を尋ねられることがあります。迷っているとき、本人から問い掛けてくれれば相手も応えることが出来ますが、認知症をもつ人は周囲に話し掛けに行くほど余裕がないかも知れません。外へ出て行くきっかけは様々ですが、家から一旦離れてしまうと、来た道を後戻りすることが難しい時があります。そのような認知症の方を守るために、昔からセンサーという機器が登場しています。センサーは介護保険での福祉用具レンタル対象になっていて、要介護1まではレンタル料金は自費で、要介護2以上になると自費レンタル料1〜3割負担になります。
センサーの種類は数多く、人が通りすぎたときに知らせるもの、踏んだときに知らせるもの、忍び込ませた機器がセンサーから離れたときに鳴るものなどがあります。
最近は、靴底に探知機を忍ばせる機器が増えています。探知機をポケット、上着に縫い付けてしまうのは、紛失、置き忘れがあるからです。裸足や靴下だけで歩いている人を見たら、周囲の者もすぐに異常と気付くし、習慣の靴をぬぐことはないだろうという発想からの誕生です。携帯紛失時の探知機と同じ展開で、屋外に出ても行き先を見つけ出します。探知機を備える靴は特別な仕様になっており、探知機を扱う業者からの購入になっています。玄関はその専門靴のみを置いて、本人に分かりやすいように玄関口を整頓しておきます。 機器に頼らない方法といえば、昔から先手作戦。
外へ出掛けようとするとき、ふと立ち止まる、われを振り返る仕掛けが玄関に必要です。玄関に今の時刻を示す時計(午前、午後がわかるデジタル時計がお勧め)や今日がわかる日めくりカレンダー、自分を映し出す鏡、下駄箱に外出靴を収めておくと、出掛けようと準備しているときに、振り返って家族に尋ねに来るかも知れません。その時は注意することなく、訳を聞いてみましょう。可能であれば一緒に外出したり、前兆に気付いたら、さりげなくお茶タイムに誘ったり、本人が勘違いしている人を見事に演じましょう。本人にとって居心地良くなれば、その場に留まるかと思います。
また、出掛けるということは、元気が「あり余っていること」に注目してみましょう。昼間にしっかりと動いているか、夜間は熟睡できているか、生活リズムの崩れや睡眠の取り方にも気を掛けてみてください。
最近の医学情報では、昼寝は20分以内で、ソファーでの寝落ちや机の伏せ寝で十分と言われています。布団やベッドでのごろ寝は30分以上超過しやすいのと、熟睡で夕方〜夜間に元気になるという体内リズムの崩れが生じます。元気な方が早寝すると、年齢上の睡眠時間は満たされているので、夜間に目が覚めてしまうのも当然で、気付かないうちに体内リズムを崩してしまいます。
他にも、太り過ぎると無呼吸症候群で、身体は横になっているけれども、実は脳も身体も寝ていない、と言われています。生活習慣病への予防方法が、病的な外歩きを防ぐことに役立つことがあります。
人の行動は、心と体のバランスで出来上がっていることが改めてわかります。「徘徊」と聞くと、歩き回り続けるイメージがよぎってしまいますが、「その人の思いの外出」なので、落ち着かせる対策もあり、やんわりとした用語に変われば良いですね。